店舗・オフィスの内装の解体を東京で依頼する前に読む完全ガイド|費用・期間・原状回復の注意点

query_builder 2025/10/04
ブログ 内装解体まとめ記事
店舗・オフィスの内装の解体を東京で依頼する前に読む完全ガイド|費用・期間・原状回復の注意点


「内装 解体 東京」で業者を探す前に、費用・工期・原状回復の線引き・手続きの全体像を一気に把握できます。本ガイドでは、店舗・オフィスの内装解体の基本とスケルトン/原状回復/部分解体の違い、造作・間仕切り・天井・床・壁・設備・残置物撤去や美装の扱いを整理。さらに、石綿含有調査と届出、解体工事業登録・産廃収集運搬許可の確認、東京消防庁やビル管理会社への工事申請・防災設備の扱い、道路占用許可と搬出計画など都内での必須手続きを解説します。


費用相場と坪単価、追加費用が出やすい条件、見積書の内訳(施工費・養生費・産業廃棄物処分費・マニフェスト)の読み方、相見積もりや時期選びで予算を抑える工夫、退去日から逆算した工程表と短納期・夜間作業の注意、騒音・粉じん・近隣対応、エレベーター養生、電気・給排水・空調、テナント契約での原状回復範囲やグリストラップ・ダクトの扱い、施工会社選びのチェックポイント(労災・損害賠償保険、アフター対応)、新宿区・渋谷区・千代田区の実例とQ&Aまで網羅。結論:必要な届出と原状回復範囲を早期に確定し、見積内訳と搬出条件を具体化できれば、余計な追加費用とトラブルを最小化し、期限内の引き渡しを実現できます。


東京で店舗 オフィスの内装解体とは 基本とスケルトンの範囲


東京の店舗・オフィスにおける内装解体とは、テナント専有部の造作や仕上げ、テナント側設備を撤去し、賃貸借契約や工事区分表で定められた引渡し状態に戻す工事のことです。対象は「室内側(専有部)」が中心で、柱・梁・床スラブ・耐力壁などの躯体、共用部や共用設備は基本的に触れません。駅直結の商業施設、高層オフィス、路面店など多様な建物が混在する東京では、建物仕様(システム天井やOAフロアの有無、天井裏のダクト密度、共用部の仕上げ)や専有部の境界が範囲決めに直結します。


内装解体の範囲は「何を撤去し、何を残すか」を明確に線引きすることが肝心で、解体の目的(退去・移転・改装)と契約条件(原状回復条項)によりスケルトン・原状回復・部分解体のいずれかを選びます。


内装解体の対象 造作 間仕切り 天井 床 壁 設備の撤去

撤去対象は大きく「造作・仕上げ」「室内側設備」の二系統に分かれます。以下は、東京のテナントビルで一般的な仕様に基づく代表例です。なお、共用部や躯体、ビル側幹線・幹配管は通常残します。


区分 主な仕様の例 撤去の主な作業 残すもの・留意点
造作・什器 受付カウンター、造作棚、バックヤード什器、カーテン・ブラインド、サイン(専有部内) 解体・分解、ビス・アンカー抜き、開口補修の範囲確認 外部サイン・袖看板は建物側扱いになることがあり、取り合いの確認が必須
間仕切り LGS(軽量鉄骨)+石膏ボード、可動パーテーション、ガラス間仕切り 解体・撤去、下地撤去、床・天井取り合い補修 躯体天井・床スラブは傷を付けないのが原則。耐火区画・防煙区画の取り扱いは境界確認が必要
天井 石膏ボード天井、岩綿吸音板、システム天井(グリッド)、ジプトーン 天井仕上げ撤去、下地解体、設備端末の取り外し スプリンクラーヘッド・感知器・非常放送スピーカーなどの共用設備は残すのが一般的
OAフロア(二重床)、長尺シート、タイルカーペット、フローリング、モルタル下地 仕上げ剥離、OAフロア撤去、不要なアンカー・モルタルのはつり 床スラブは原則現しで引渡し。大きな欠損は補修し、排水口はキャップ等で封止
壁仕上げ ビニルクロス、塗装、タイル、化粧パネル 仕上げ撤去、下地の必要範囲撤去、端部処理 隣区画との共用壁は境界線内のみ対応。遮音・耐火性能の復旧要否は契約内容で判断
電気設備 照明器具、コンセント、スイッチ、分電盤、LAN配線、弱電機器 器具撤去、分電盤撤去または残置、回路の絶縁・端末処理 幹線・共用盤は残す。非常用電源・避難誘導灯は建物側設備として取り扱う
給排水・ガス 手洗器、流し、便器、厨房機器、グリストラップ(専有部内) 器具撤去、配管の切回し・キャップ止め、床排水の封水・封止 縦管・メーター一次側は共用扱い。漏水・ガス漏れ防止の終端処置を明確化
空調・換気 室内機、天井カセット、ダクト、吹出口、給排気ファン 室内機・ダクト撤去、冷媒配管の回収・封止 室外機や屋上機器は建物側の取り合いを事前確認。外気ダクトの共用系統は残すのが一般的
建具 室内ドア、可動間仕切り建具、シャッター(専有部内) 建具撤去、枠の撤去・残置判断、開口部の養生 共用出入口や防火戸は対象外。区画扉の仕様は引渡し条件に従う
対象外の代表 柱・梁・床スラブ・躯体天井、共用配管・幹線、防災・防火・避難設備 構造体・共用設備は原則非対象。専有・共用の境界確定が最優先


「撤去対象」と「撤去不可(残す)」の境界を図面と現況で一致させることが、追加費用や工期延長を避ける最大のポイントです。


スケルトン 原状回復 部分解体の違いと判断基準

同じ内装解体でも、引渡し状態によって工事パターンが異なります。スケルトンは専有部を骨組み(躯体現し)に戻す全撤去、原状回復は入居前やビル指定仕様へ戻す復旧、部分解体は必要箇所のみの撤去です。東京ではテナント入替のスピードが速く、次入居者の工事計画と噛み合うパターン選定が重要です。


工事パターン 引渡し状態 造作・仕上げの範囲 設備(電気・給排水・空調)の扱い 向くケース 主な注意点
スケルトン 躯体現し(天井・壁・床の仕上げなし) 専有部の造作・仕上げを原則全撤去 二次側は撤去・キャップ止め、幹線・共用系統は残す 用途変更、飲食→オフィスなど大規模転用、居抜き不可の物件 天井裏・床下の配線配管密度が高いと手間増。共用設備の誤撤去防止が必須
原状回復 入居前またはビル指定仕様へ復旧 撤去+指定仕上げの復旧(例:システム天井、タイルカーペット) 指定通りに端末復旧、残すべき盤・配線の定義を図面で確認 オフィス入替、ビル標準仕様が明確な大規模ビル 「入居時点の状態」を示す資料(写真・図面)が基準。過去工事の差異は協議事項
部分解体 残すエリアと撤去エリアが混在 間仕切り一部、什器、床仕上げなど限定撤去 生かす回路・系統と撤去系統を事前に仕分け レイアウト変更、増床・縮小、短工期での改装 既存利用を前提に養生・分離解体が必要。粉じん・騒音管理の難易度が上がる


選定の判断基準は、賃貸借契約の原状回復条項、ビルの工事区分表・仕様書、入居時の写真・引渡図(竣工図)、現況調査(天井裏・床下)の四点整合です。加えて、次テナントの入居計画や引渡し期限を勘案し、工事の合理性(撤去後の再施工有無)で決めると無駄がありません。


「スケルトン」「原状回復」「部分解体」の言葉だけで判断せず、引渡し状態の具体(天井・床・壁・設備の扱い)を1項目ずつ定義するとトラブルを防げます。


残置物撤去 片付け 美装 クリーニングの扱い

残置物撤去・片付け・美装(クリーニング)は、内装解体と同時に語られますが、見積・契約上は別項目化されることが多い領域です。特に東京のオフィスや商業テナントでは、家具・什器・在庫・情報機器などの残置内容が多岐にわたり、処理方法や立ち合い要否が異なるため、事前の線引きが重要です。


項目 内装解体費に含まれることが多い作業 別途・オプションになりやすい作業 実務上の確認ポイント
残置物撤去 一般什器・棚・カウンターの撤去、タイルカーペットの剥がし、ダンボール類の回収 金庫・サーバーラック・大型冷蔵庫など重量物、在庫品・商品、機密媒体の専用処理 数量・重量・階層の明記、専用エレベーターの使用可否、機密書類・HDDの証憑要否
片付け(分別・搬出) 内装材の分別、室内からの搬出、仮置きの管理 長距離養生が必要な搬出、夜間のみの搬出、地下街・高層階での特殊搬出 共用部の動線・養生範囲、エレベーター台数と時間帯、周辺テナントへの配慮事項
美装・クリーニング 工事完了後の清掃、ほこり除去、養生糊の剥離 ワックス仕上げ、ガラス・サッシの高所清掃、ニオイ対策のオゾン処理等 引渡し検査の判定基準(床現しの清掃レベル、ダクト口の清掃範囲)の共有


残置物の内容により処理手段や所要時間が大きく変わるため、現地調査で現物確認を行い、写真付きの一覧化と数量の明記を行うと見積のブレが減ります。特に情報機器や機密文書は、証明書の要否や立ち合いの手順をあらかじめ決めておくとスムーズです。


内装解体の見積書では「残置物撤去」「片付け」「美装」の含まれ方が業者により異なるため、範囲表現を具体化し、引渡し検査での合否基準まで共有しておくと安全です。


東京の内装解体の法規と手続き 東京都で必要な届出と確認事項


東京都内で店舗・オフィスの内装解体(スケルトン化や原状回復を含む)を進める際は、工事の規模にかかわらず、建設業の許認可、産業廃棄物の適正処理、石綿(アスベスト)に関する事前調査・届出、東京消防庁やビル管理会社への工事申請、そして道路の使用・占用に関する手続きを一つずつ確認する必要があります。着工前に必要な許認可・届出の有無を網羅的に洗い出し、提出先・提出時期・添付書類を明確化しておくことが、遅延やトラブルを未然に防ぐ最重要ポイントです。


解体工事業登録 産廃収集運搬許可の有無を確認

内装解体を請け負う施工会社には、請負金額の大小に応じて「建設業許可(解体工事業)」または「解体工事業登録」のいずれかが必要です。請負金額が500万円(消費税を含む)以上の解体工事を受注する場合は建設業法に基づく「建設業許可(解体工事業)」が必須で、500万円未満の解体工事であっても各都道府県の「解体工事業登録」(東京都知事登録)が必要です(建設業許可保持者は登録不要)。登録・許可の有無、業種、許可番号と有効期限は契約前に書面で確認します。


産業廃棄物については、工事で発生する廃材の排出事業者は一般に元請負人(元請業者)となり、適正処理の責任を負います。収集運搬を自社で行う場合は「産業廃棄物収集運搬業許可(東京都および運搬・処分の各都県)」、飛散性石綿等を扱う場合は「特別管理産業廃棄物収集運搬業許可」が必要です。処分は許可を有する処分業者へ委託し、委託契約書の締結とマニフェスト(電子マニフェストを含む)の交付・保管を確実に行います。


また、内装解体では空調機や冷凍冷蔵機器の撤去に伴い「フロン排出抑制法」上の手続きが発生します。第一種特定製品に該当する機器の廃棄時には、第一種フロン類回収業者へ回収を依頼し、行程管理票(フロン類回収証明を裏付ける書類)のやり取りと保存が必要です。古い蛍光灯安定器等にPCBが含有する場合は、特別な保管・処分ルートが必要になるため、事前調査での確認と専門業者への委託が不可欠です。


解体の内容・規模によっては「建設リサイクル法」の事前届出(発注者または元請による)が必要になるケースがあります。一般的な内装のみの撤去は届出対象外となる場合が多い一方、構造躯体の斫り・一部解体等を伴う場合は対象になり得るため、工事範囲を精査して所管への要否確認を行います。


手続・許認可 根拠・区分 提出先・確認先 誰が行うか 提出・確認のタイミング 主な添付・確認書類
建設業許可(解体工事業) 建設業法/請負500万円以上 東京都(知事許可)等 施工会社 契約前に有効性を確認 許可通知書写し、経営業務管理責任者・専任技術者の要件
解体工事業登録 都道府県登録(有効5年) 東京都(知事登録) 施工会社 契約前に有効性を確認 登録通知書写し、技術管理体制
産業廃棄物収集運搬業許可 廃棄物処理法(有効5年) 東京都+運搬・処分先の各都県 収集運搬を担う事業者 契約前に品目・区域を確認 許可証写し(品目・積替え保管の有無・区域)
特別管理産業廃棄物収集運搬業許可 廃棄物処理法(飛散性石綿等) 東京都+運搬・処分先の各都県 収集運搬を担う事業者 石綿除去等が発生する前 特管許可証写し、積替え保管の可否
フロン類回収・行程管理票 フロン排出抑制法 第一種フロン類回収業者(委託) 元請/設備業者 機器撤去の前 回収証明、行程管理票(写しの保存)
建設リサイクル法 事前届出 条件該当時(構造躯体の解体等) 所管行政(東京都・区市) 発注者または元請 着工前 分別解体等計画、図面、工程 等
マニフェスト(電子含む) 廃棄物処理法 元請(排出事業者) 搬出時に交付・完了後保存 産廃委託契約書、処分業者許可証写し


許認可は「番号・有効期限・対象品目・区域(都県)」まで照合し、下請・協力会社も含めて一体で適法な体制になっているかを確認します。特にコンテナの「積替え・保管」は許可区分が異なるため、現場内の仮置き以外は安易に行わないことが重要です。


石綿含有調査 アスベスト事前調査と届出

全ての解体・改修工事では、着工前に建材の石綿(アスベスト)含有の有無を把握するための事前調査(有資格者による調査)が義務づけられています。図面・台帳の確認、現地目視、必要に応じたサンプリングと分析(JISに準拠)を行い、結果を記録・保存します。2006年以前に建設・改修された建物では、内装材(天井材、ケイ酸カルシウム板、床材の接着剤等)に含有の可能性があるため、早期の調査着手が肝要です。


事前調査の結果は、制度に基づき工事着手前に「事前調査結果の報告」(電子報告を含む)を行います。石綿含有が判明し、除去・封じ込め・囲い込み等の作業(特定粉じん排出等作業)を実施する場合は、大気汚染防止法に基づく届出(所管行政)と石綿障害予防規則に基づく届出(所轄労働基準監督署)を、作業開始の一定期間前(目安として14日前)までに行い、作業計画書・養生図・工程・作業員の資格等を整えます。現場では標識の掲示、作業区域の隔離、負圧集じん、湿潤化、清掃・測定等の飛散防止措置を徹底し、廃石綿等は「特別管理産業廃棄物」として許可業者により密閉容器で収集運搬・最終処分します。


アスベスト関連の段取り 主な内容 提出先・関与機関 着手までの目安 ポイント
事前調査(有資格者) 図面・現地・採取分析、結果記録 -(結果は保存・掲示) 契約直後に実施 調査者資格の確認、対象範囲の網羅
事前調査結果の報告 電子報告を含む制度に沿った報告 都道府県等(東京都の所管部局) 工事着手前 工事件名・場所・対象建材・写真等の整備
特定粉じん作業の届出 除去・封じ込め・囲い込み計画の届出 東京都等の所管行政 作業開始の一定期間前 隔離・負圧・集じん・清掃の計画明記
労基署への届出 石綿障害予防規則に基づく届出 所轄労働基準監督署 作業開始の一定期間前 作業主任者選任、特別教育の受講
廃棄物の特管処理 密閉容器で収集運搬・処分 特管許可を持つ許可業者 届出完了後に実施 マニフェスト(特管)の交付・保存


非飛散性の石綿含有建材(レベル3)であっても、破砕時の粉じん抑制や分別梱包、適正処理は必須です。アスベストは「調査→報告→届出→隔離・除去→適正処理→記録保存」の順で一気通貫の管理が必要で、内装解体の工程表にもこれらの期間を反映させます。


東京消防庁 ビル管理会社への工事申請 防災設備の取り扱い

オフィスビル・商業施設では、管理規約に基づき「工事申請」を行い、共用部の養生・入退館・エレベーター使用・作業時間・騒音管理・搬入出ルールを取り決めます。提出書類の例として、工事概要書、工程表・施工計画書、責任者・有資格者名簿、保険(請負業者賠償責任保険等)証券、養生・搬出ルート図、夜間・休日作業の届出、外注・下請体制図などが典型です。工事中に防災センター(警備)と確実に連携し、発報停止・復旧、立会い、鍵管理を明確化しておきます。


火気を使用する溶接・溶断・ライニング撤去等を行う場合は、東京消防庁の所轄消防署に対する手続き(火災予防条例に基づく火気使用に関する届出や協議)を行い、監視員の配置、可燃物の除去、消火器の準備、火気厳禁区の設定などの防火措置を講じます。消防用設備等(自動火災報知設備、スプリンクラー、非常放送等)を一時停止・養生・移設する必要がある場合は、事前に所轄消防署へ届出・協議を行い、停止時間・対象範囲・代替措置・復旧試験の手順を取り決めることが求められます。誤発報防止のため、感知器の養生は許容範囲・方法(ビル側基準)に合わせ、復旧時の総合点検・作動確認の立会いを工程に組み込みます。


申請・協議の対象 提出先・関係先 主な内容 必要となる場面 確認事項
工事申請(ビル管理) ビル管理会社・防災センター 工程、作業時間、搬入出、養生、保険 全ての内装解体 共用部利用のルール、入退館、警備手配
火気使用に関する届出 所轄消防署(東京消防庁) 溶接・溶断等の作業計画・監視体制 火気作業を行う場合 可燃物除去、消火器、火気管理者の配置
消防用設備の停止・復旧 所轄消防署/ビル管理 停止範囲・時間・代替措置・復旧試験 感知器・スプリンクラー等の停止が必要な場合 誤発報防止、停止・復旧の立会いと記録


ビル独自の「工事基準書」には、防煙区画・防火区画の貫通補修方法、ケーブルやダクトの仮設・撤去手順、エレベーター養生材の仕様、作業可能時間帯(平日夜間・休日のみ等)が明記されていることが多く、基準書の事前入手と工程・施工計画への反映が不可欠です。


路上占用許可 搬出計画 駐車場と搬入出動線

廃材や資機材の搬入出では、建物内の搬出動線(解体エリア→養生済み通路→荷捌き場→車両)に加え、敷地外(公道)での一時的な停車・荷捌き・仮置きが必要かどうかを早期に判断します。公道での作業・停車を伴う場合は「道路使用許可(道路交通法・所轄警察署)」、占用物件(仮設柵・コンテナ等)を設置する場合は「道路占用許可(道路法・道路管理者)」が必要になります。短時間の荷捌きであっても、場所・時間帯・交通量によっては警備員(交通誘導警備業務)の配置が求められます。


区分 根拠法令 申請先 主な対象行為 ポイント
道路使用許可 道路交通法 所轄警察署 荷捌きのための一時的な作業・停車 期間・場所・車両台数・警備計画を明記
道路占用許可 道路法 道路管理者(国・東京都・区市) 仮設足場、コンテナ、仮囲い等の設置 占用物件の種類・期間・安全対策を明記


搬出計画では、ビルの荷捌き場の予約、エレベーターの養生と専用運転の時間割、車両サイズ(2t・4tの進入条件)、通行時間帯の規制、夜間作業の可否、周辺道路の一方通行や歩行者動線との交錯を整理します。路上コンテナの設置や公道での長時間の仮置きは原則避け、構内で完結できる動線・仮置き計画を優先するのが安全・近隣配慮の観点からも望ましい対応です。


なお、ブレーカー等の騒音・振動を伴う機械の使用が一定の条件に該当する場合は、騒音規制法・振動規制法に基づく「特定建設作業」の事前届出(区役所等)が必要となることがあります。該当の有無は機械の種類・使用時間・連続日数等で判定されるため、工程と機械選定の段階で所管へ確認し、届出が必要な場合は着工前に済ませます。


これらの道路・搬出関連の手続きを工程に落とし込む際は、退去日(引渡日)から逆算して許可取得のリードタイム、荷捌き場の予約、夜間帯の警備手配を前倒しで確保し、突発的な追加便やアクシデント時の代替ルートも用意しておくと安心です。


費用相場と坪単価の目安 追加費用が発生しやすいポイント


東京での内装解体は、工法やビル管理規定、搬出条件により単価が大きく変動します。ここでは「スケルトン解体」「原状回復(撤去中心)」「原状回復(撤去+復旧)」を区別し、業態別の坪単価の目安、追加費用が生じやすい項目、見積書の見方、そして予算最適化のコツを整理します。数字は東京都心部(東京23区)の商業ビル・オフィスビルでの一般的な例を想定した目安で、税別表示です。


坪単価の目安 スケルトン 原状回復 業態別の相場

同じ面積でも、天井高、OAフロアやGL工法の有無、設備量(ダクト・給排水・電気)、共用部の養生と搬出導線の制約で手間が変わり、坪単価に影響します。以下は、東京の内装解体でよく参照されるレンジです。


業態・スコープ スケルトン解体(内装撤去のみ) 原状回復(撤去中心) 原状回復(撤去+復旧の合計・参考)
オフィス 3.5〜5.5万円/坪 2.5〜4.0万円/坪 7〜15万円/坪
物販店舗 4.0〜6.5万円/坪 3.0〜5.0万円/坪 8〜18万円/坪
飲食店(厨房・ダクト・グリストラップあり) 5.0〜9.0万円/坪 4.0〜7.0万円/坪 10〜22万円/坪


上記は「撤去・解体」中心の目安です。原状回復が「スケルトン返し」の契約であれば、実質的にスケルトン単価が適用されます。一方、ビル標準仕様(天井・壁・床・照明など)への復旧が必要なオフィスでは、解体費に加えて内装復旧工事費が別途かかり、合計単価が上表右列のレンジに近づきます。


小規模面積や短工期、夜間限定などの条件では、最低出動費や割増が効きやすく、坪単価が上振れします。逆に、面積が大きく連続作業がしやすい現場は単価が下がる傾向です。


追加費用の典型例 アスベスト 残置物 夜間作業 搬出条件

基本の解体・撤去費に加算されやすい項目を整理します。現地調査時に数量・条件を明確化し、見積段階で反映しておくことが重要です。


追加項目 発生条件の例 目安費用・割増 留意点
残置物撤去(什器・在庫・家具) 原状回復範囲に含まれず、室内に残存 2t車1台あたり6〜12万円程度(量・品目で変動) 資源物は分別で処分単価を抑制。買取・リユースで相殺も可。
アスベスト事前調査・分析 2006年以前の建材や接着剤、吹付材の可能性 一式5〜20万円+分析1検体1〜2万円 結果次第で工期・工法・届出が変わるため早期実施が必須。
アスベスト除去 含有が判明し、除去・封じ込め等が必要 数量・レベルで大きく変動(数十万〜数百万円) 専門業者・隔離養生・負圧集じん・届出等が必要、別工程扱い。
夜間・休日作業割増 騒音規制やビル規定で時間帯が限定 基本工事費の20〜40%増 人員増・運搬時間制限・エレベーター専有の費用が連動。
防音・防塵・エレベーター養生強化 高級ビル・共用部の長距離搬出 5〜30万円程度(規模・面積に応じて) 防音パネル・養生材の増設や原状復旧清掃を含む。
路上占用・搬出計画・交通誘導 トラックの停車スペースが確保できない 交通誘導員1名1日1.6〜2.5万円×人数+申請費 警備計画・近隣周知・ビル管理承認とセットで手配。
階段搬出・長距離搬出 EV使用不可・低荷重・深夜制限など 総額で1〜2割増になりやすい 台車経路や仮設スロープの追加が必要になる場合あり。
重量物・大型ダクト・厨房機器撤去 グリストラップ、ルーフファン、長尺ダクト等 機材費・玉掛け・搬出手配で都度見積 クレーン・高所作業車が必要な場合は別途申請・警備費が発生。
フロン類(冷媒)回収・証明書 パッケージエアコン・冷凍冷蔵機器 ルームAC1台1.5〜3万円、業務用3〜6万円/台 回収証明書の発行必須。機器撤去費と分けて計上される。
グリストラップ汚泥処理 飲食店の退去時 1槽あたり5〜15万円程度(容量・汚泥量) 産業廃棄物として処理、清掃報告書の提出を求められる場合あり。


追加費用の多くは「現場条件」「規制対応」「残置物量」から発生します。現地調査で写真・数量表を共有し、工程・作業時間帯・搬出ルートを確定させてから見積り化すると、予期せぬ増額を抑えられます。


見積書 内訳の見方 施工費 養生費 産業廃棄物処分費 マニフェスト

見積書は「作業の中身」と「数量・単価・小計」の整合性が最重要です。内訳が粗いと追加費の温床になります。以下のような構成で提出されるのが一般的です。


内訳項目 主な内容 チェックポイント 目安比率(合計に対し)
養生・仮設費 共用部養生、防音・防塵、エレベーター養生、仮設電源 面積・材料・設置範囲が図面や写真で特定されているか 5〜15%
解体・撤去工 天井・間仕切り・床・設備撤去、ハツリ、開口処理 部位別数量(m²・m・台数)と単価が明示されているか 40〜60%
搬出・運搬 内部搬出、積込、車両運搬、積替保管 搬出導線・距離・エレベーター使用条件が反映されているか 3〜10%
産業廃棄物処分費 木くず・金属くず・石膏ボード・混合廃棄物の処分 品目別単価、処分先、推定重量(t)または容積が妥当か 20〜35%
調査・届出・証明 石綿含有調査・分析、フロン回収証明、マニフェスト 検体数、手数料、証憑の有無が明示されているか 1〜5%
現場管理費・共通仮設費・諸経費 工程管理、近隣対応、保険、事務費 率の根拠(例:5〜10%)と対象範囲が適正か 5〜12%


処分費は地域・時期で変動します。目安として、混合廃棄物よりも分別した木くず・金属・石膏ボードの方が単価は下がる傾向です。金属は買取でマイナス計上される場合があります。


マニフェスト(紙または電子)は必ず発行・回収状況を確認し、工事完了時に写しや電子確認記録の提出を受けてください。発注者側での保存義務期間を把握し、テナント退去の証憑として保管すると、後日のトラブル予防に有効です。


なお、見積は「坪単価一式」ではなく、部位別の数量根拠(例:天井ボード撤去m²、間仕切りLGS+PB撤去m²、長尺シート剥がしm²、厨房機器台数、ダクト撤去m)まで出してもらうと、比較と減額調整が容易になります。


予算を抑えるコツ 相見積もり 時期選び 仕様調整

同じ原状回復範囲でも、条件整理と仕様の優先順位付けでコストは変えられます。無理なコストダウンは品質・安全に直結するため、根拠を伴う方法で見直します。


相見積もりは最低3社、同一条件(図面・写真・数量表・退去日・作業時間帯・搬出ルート)で依頼するのが鉄則です。現地調査の立会い時にビル管理規定や工事可能時間、エレベーター荷重、養生範囲をその場で確認し、条件差をなくします。


時期選びでは、年度末(2〜3月)や大型退去が重なる時期は単価が上がりやすい傾向があります。余裕を持った発注で工程に遊びを作ると、夜間割増や増員費用を避けやすくなります。短納期は直行直帰体制の手配や廃棄物の積替・運搬の回数増につながり、総額が膨らみがちです。


仕様調整のポイントとして、貸主指定の原状回復範囲を厳密に読み、撤去不要な部位を残す交渉余地がないかを確認します。例えば、OAフロアの再利用可否、天井グリッドや共用ダクトの扱い、ビル側で復旧する設備の境界(テナント側は室内側までなど)を明文化できれば、不要な撤去・復旧を避けられます。


残置物は、資源物の分別・買取(スチール什器、ステンレス製厨房機器、銅配管など)を活用して処分費を圧縮します。ただし、解体由来の廃材は産業廃棄物に該当するため、資格のある業者の収集運搬・処分に委ねます。


最後に、見積比較では「単価」だけでなく、産廃の分別方針、養生仕様、夜間割増の扱い、交通誘導の人数根拠、アスベスト調査の検体数、フロン回収の台数・機種など、数量根拠の妥当性をチェックしてください。根拠が揃った見積は追加費の発生を抑え、退去日厳守の確度を高めます。


工期とスケジュールの組み方 退去日から逆算


東京都内のテナントビルや複合施設では、共用部の使用制限や騒音時間帯の規定、エレベーターの予約、荷捌き場の利用調整など、運用ルールに強く影響されます。したがって、内装解体の工期は退去日から逆算し、建物管理会社の承認サイクルと搬出条件を中核に据えて工程を組むことが最重要です。「退去日=引き渡し検査日」から逆算し、前倒しでリスクを潰すのが東京の内装解体の定石です。ここでは、現地調査から引き渡しまでの流れと、短納期対応時の実務ポイントを整理します。


現地調査から引き渡しまでの流れ

全体の進め方は、現地調査で現況と搬出条件を確定し、見積・契約後に工事申請とアスベスト事前調査を並行して実行、承認取得後に着工、養生・解体・分別・搬出・美装を経て引き渡しという順序です。東京のオフィス・店舗では、エレベーターの積載制限や積込時間枠、地下ピットの高さ制限、騒音作業の時間帯ルールが工期のクリティカルパスになりやすいため、工程表と搬出計画は早期に確定させます。


時点 目安日数 主担当 主要タスク・成果物 要注意ポイント
T-35〜T-28 1週間前後 発注者・施工会社 現地調査、残置物の確定、搬出動線と荷捌き場の確認、写真・寸法採取 共用部養生範囲、エレベーターの養生仕様、騒音制限・夜間可否の確認
T-28〜T-21 3〜7日 施工会社 見積提出、工程の素案、仮の搬出計画書、必要機材の当たり スケルトンか原状回復かの線引き、復旧範囲の境界確認
T-21〜T-14 3〜7日 発注者・施工会社 契約締結、アスベスト事前調査の手配、工事申請書の作成着手 石綿含有建材調査者の手配、既存図面・仕上表の収集
T-14〜T-10 3〜5日 施工会社・ビル管理 工事申請の提出、工程表と施工計画書の提出、エレベーター・荷捌き場予約 防災センターへの連絡手順、火災報知設備の停止・復旧手順の確認
T-10〜T-7 2〜3日 施工会社 アスベスト事前調査の結果反映、分別計画・搬出量の積算確定 石綿等が疑われる場合の作業区分の判定と工程再編
T-7〜T-3 3〜4日 施工会社 資機材搬入、共用部養生、解体着手、分別・搬出の開始 騒音作業の時間帯順守、台車動線の確保、マニフェスト交付の段取り
T-3〜T-1 2〜3日 施工会社・発注者 最終搬出、原状回復の補修・是正、養生撤去、美装・クリーニング 躯体の傷・ビス穴・アンカー跡の是正、共用部の汚損チェック
T 当日 発注者・ビル管理・施工会社 引き渡し検査、残補修、鍵・入退館証の返却、引渡書の取り交わし 検査是正の即応、写真台帳・マニフェスト控えの提出


上記は一般的な目安であり、東京の大規模オフィスや商業施設では工事申請の承認サイクルが長めに設定されている場合があります。繁忙期や年末年始、施設の定期点検日は別枠運用となることがあるため、承認見込み日と騒音作業の許可枠を先に押さえると工程が安定します。


事前調査 工事申請 工程表 施工計画書

事前調査では、造作の下地、二重天井の有無、床の仕上げ構成、ダクト・電気・給排水の切り回し跡、スラブ段差、梁・柱の凸凹などを把握します。搬出計画は、エレベーターの寸法・積載荷重、台車の通行幅、荷捌き場の利用枠、周辺道路の規制時間帯を踏まえて組み立てます。工事申請は、ビル管理会社の指定書式に沿い、工程表、施工計画書、養生計画、搬出計画、安全衛生計画、作業員名簿、労災保険・損害賠償保険の写し等を添付するのが一般的です。


工程表は、騒音・振動作業の時間帯、夜間作業の有無、エレベーターの予約枠、産業廃棄物の積込時刻、近隣対応を反映した実行可能なものである必要があります。施工計画書では、解体手順、使用工具、粉じん対策、負圧養生や集じん機の設置、火気作業の管理方法、非常時の連絡体制を明記します。


書類・手続き 作成・提出者 承認・確認 リードタイムの目安 ポイント
工事申請一式 施工会社 ビル管理会社 数日〜1週間程度 書式・添付資料の不足は差し戻しに直結
アスベスト事前調査 有資格の調査者 発注者・施工会社で共有 調査〜結果共有まで数日程度 結果により工程や工法が変わるため早期実施
エレベーター・荷捌き場予約 施工会社 ビル管理会社 施設毎の運用による 繁忙枠は早期に満枠になりやすい
防災関連の調整 施工会社 防災センター等 当日〜数日 火災報知設備の停止・復旧時間を工程に反映


承認取得が遅れた場合は、工程のクリティカルパスが「解体作業」そのものではなく「共用部運用」に移るため、作業員増員だけでは短縮できません。申請と搬出予約を最優先に進めつつ、分別・積込効率を高める機材選定で工期のブレを抑えます。


着工 養生 解体 搬出 美装 引き渡し

着工初日は共用部と室内の養生を完了し、避難経路・非常口・受電盤・消火栓・感知器等の位置を再確認の上、着手前ミーティングで危険予知を共有します。解体は上から下、外周から内側の順序など、建物条件に応じたセーフティオーダーで進め、分別・搬出を同時並行で回すと日程が安定します。最終日は美装・残材確認・養生撤去を完了させ、発注者とビル管理の検査に備えます。


工程 主な作業 品質・安全の要点 記録・提出物
養生 共用部・室内の養生、粉じん対策 避難動線の確保、エレベーター養生の強度確保 養生写真、搬出動線図
解体 造作・間仕切り・天井・床の解体 躯体非破損、騒音時間帯遵守、火気管理 作業日報、工事写真台帳
分別・搬出 木くず・金属・がれき等の分別、台車搬送 積載荷重・台車運用の遵守、共用部クリーン維持 産業廃棄物マニフェスト控え
補修・復旧 原状回復の是正、アンカー跡補修 境界線の取り違い防止、仕上がりの平滑性 是正リスト、完了写真
美装 清掃、ワックスがけ等の美装 粉じん残りの除去、共用部の原状復帰 清掃完了報告
引き渡し 施主・管理検査、鍵返却 残補修の即応、トラブル未然防止 引渡書、是正完了報告


工期を組む際は、残置物撤去の有無、厨房やダクトの撤去量、設備の切り回し跡の補修規模、床材の種類、荷揚げ・荷下ろしの可否、周辺の交通混雑の影響などを変動要因として見込むと、実行性の高いスケジュールになります。


短納期 即日対応が必要なときの注意点

短納期での対応では、承認・申請・搬出枠の確保が最大のボトルネックになります。まず、ビル管理会社の工事申請の締切と承認サイクル、荷捌き場・エレベーターの空き枠、騒音作業の許可時間を最優先で確保し、工程表は「人員増強」だけに頼らず、積込効率の向上や分別の先行、資機材の搬入前倒しで圧縮します。「夜間作業に切り替える」ことは有効ですが、ビルの夜間運用ルールや警備体制、騒音上限の制限によっては逆に非効率化するため、事前の実地確認が不可欠です。


工期圧縮の策 リスク・留意点
承認手続きとアスベスト事前調査の並行実施 結果により工法変更が必要な場合は工程を再編
分別・解体・搬出のライン化で滞留を削減 共用部の混雑時は台車待ちが発生し、枠の再調整が必要
夜間・早朝の搬出枠活用 ビル運用で不可の場合があるため事前確認が必須
追加人員と機材の増強 休憩スペース・資材置場の制約下では効果が限定的
先行養生と資機材の前倒し搬入 受入可能時間と保管場所の確認が必要


短納期案件では、工程全体に予備日を設けにくいため、現場代理人の常駐管理と日報・進捗写真の即日共有で意思決定を速めます。検査日直前に残補修が集中しないよう、是正項目は日次で潰し込み、鍵・入退館証の返却やマニフェスト控えの整理も前日までに完了させると、引き渡しがスムーズになります。なお、天候や周辺イベント等の外部要因で荷捌き場や道路の運用が変わることがあるため、代替ルート・代替枠も検討しておくと安心です。


原状回復の注意点 テナント契約での確認事項


原状回復は「契約で定めた状態」に正確に戻すことが核心であり、スケルトン返しや部分復旧といった一般的な用語ではなく、賃貸借契約・特約・ビル管理規程・工事区分で定義された具体水準に合わせることが最重要です。東京の店舗・オフィスでは、同一ビルでも区画や業態により要求水準が異なるため、書面で「どこまで解体・撤去し、どの範囲を復旧するか」を先に合意し、明け渡し条件と工事内容を一致させることがトラブル防止の鍵になります。


賃貸借契約 管理規約 原状回復範囲の線引き

原状回復は民法上の原則よりも、賃貸借契約と特約、そしてビルの管理規程・工事区分(A工事/B工事/C工事など)により個別具体的に優先的に決まるのが通例です。事業用物件では、住宅と異なり「通常損耗・経年劣化」の扱いも特約でテナント負担とされる例が少なくありません。解体に着手する前に、以下の書類と図面で線引きを確定してください。


  • 賃貸借契約書・重要事項説明書・特約条項(原状回復条項、看板・設備の扱い、明け渡し条件)
  • 管理規約・テナント工事マニュアル・内装監理基準(工事時間帯、養生、騒音・粉じん、竣工検査)
  • 工事区分表(A工事=貸主負担/B工事=調整要/C工事=テナント負担の考え方)
  • 現況図・躯体図・天井伏図・設備境界図(テナント区画と共用・躯体の境界、受電・給排水・空調・防災の切り分け)
  • 看板設置承認書・屋外広告の許可関係書類(撤去時の復旧と許可の取扱い)
  • 明け渡し仕様書・原状写真(退去時に要求される状態と清掃水準、美装範囲)

特に次の境界は、費用と工期に直結します。


原状回復の責任分担の代表例(契約確認の着眼点)
対象 原状回復の基準例 貸主・管理側の関与 テナント負担の典型 注意点
躯体・スラブ 穿孔部の止水・防火区画の復旧、アンカー跡の補修 A工事扱いの判断や指定工法の指示が入ることがある テナントが施工した貫通・アンカーの原状復旧 コア抜きの止水不良は漏水リスク。試験記録や写真提出を求められることがある。
天井・壁・間仕切り 入居前仕様への復旧、またはスケルトン 共用ダクト・天井チャンバー周りは管理側承認が必要 造作撤去、開口補修、下地・仕上げの復旧 耐火・防煙区画の貫通補修は指定材料・工法を求められる場合がある。
タイルカーペット撤去、糊だまり除去、下地補修 二重床やOAフロアはB工事判断になる場合あり テナント施工範囲の撤去・補修・美装 躯体研磨や不陸補修は範囲次第で追加費用化しやすい。
電気(受変電含む) 専有盤の結線整理、端末処理、残置機器撤去 受電容量・共用幹線は管理側承認必須 照明・コンセント・分電盤の撤去と端末処理 絶縁抵抗測定などの記録や竣工届の提出を要求されることがある。
給排水・ガス 盲蓋、止水、封水確保、漏水がない状態 メーター類は供給会社・管理側と調整 器具撤去、配管端末処理、清掃 止水位置・バルブ共有のビルでは作業時間帯が限定される。
空調・換気 室内機撤去・ダクト処理・天井復旧 共用熱源や基幹ダクト接続部は管理側指示 パッケージエアコン・ダクト・ルーバー撤去 冷媒回収証明の提出を求められることがある。
防災設備 感知器・スプリンクラーヘッドの原状復旧 消防設備士・点検事業者の立会いが必要なことがある テナント増設分の撤去・復旧 自火報・排煙・非常放送の系統は勝手に撤去不可。申請ルールに従う。
看板・サイン 撤去・躯体補修・仕上復旧・清掃 外装・共用部は管理側の承認必須 袖看板・ウインドウサイン等の撤去 屋外広告物の許可関係は撤去時の手続きが必要な場合がある。


上記はあくまで代表例であり、最終的な線引きは契約書・特約・ビルの工事マニュアルで確定し、その合意内容を見積書・施工計画・引渡書に反映させることが不可欠です。


退去立会い 引渡書 原状確認のチェックリスト

退去立会いは、工事前の事前打合せ・工事中の中間確認・工事後の竣工検査・是正確認の4段階を基本とし、合意したチェックリストを添付した引渡書(明け渡し証)への署名・押印をもって完了とするのが安全です。ビル管理会社・貸主・施工会社の同席が求められることが多く、写真帳・試験成績表・廃棄証憑の提出有無も事前合意しておきます。


退去時 原状確認チェックリスト(例)
項目 確認内容 提出・提示する証憑 対応主体
電気設備 分電盤の端末処理、残置機器無、照明撤去、結線図の整合 絶縁抵抗測定記録、撤去前後写真 施工会社(電気工事士)
給排水 器具撤去、盲蓋・止水、漏水無、床排水の封水確保 通水・漏水試験記録、写真 施工会社(管工事)
空調・換気 室内機・ダクト撤去、開口補修、天井復旧 冷媒回収証明、撤去前後写真 施工会社(冷媒取扱事業者)
防災設備 感知器・スプリンクラー・表示灯等の原状復旧と動作系統の確認 点検実施報告書(必要に応じ)、写真 施工会社/管理会社手配
内装(天井・壁・床) 造作撤去、下地補修、仕上げ復旧またはスケルトン 仕上げ範囲図、撤去前後写真 施工会社
看板・サイン 撤去、躯体補修、外装・共用部の美装 撤去前後写真、許可関連の抹消書類(必要時) 施工会社/テナント
残置物・産廃 残置物ゼロ、分別、飛散物無 産業廃棄物管理票(マニフェスト)控、写真 施工会社
美装・清掃 床・壁・サッシ・ダクト開口の清掃、粉じんなし 美装完了写真 施工会社
鍵・セキュリティ 鍵・カード返却、シリンダー交換の要否 引渡書(明け渡し証)、返却リスト テナント/管理会社
図面・記録 撤去範囲図、完了写真帳、試験・点検記録の提出 データ納品(PDF等) 施工会社


退去日直前は是正工事が集中しがちです。最低でも「事前確認(仮検査)」→「是正」→「本検査」→「引渡書締結」の流れを押さえ、鍵の返却や供給契約の停止(電気・水道・ガス・通信)のタイミングを管理側と擦り合わせると安全です。東京電力や東京ガス等の停止・メーター撤去は日程調整に時間を要する場合があります。


看板 グリストラップ 厨房 ダクトの扱い

飲食・物販・サービス系の退去では、看板、グリストラップ、厨房機器、排気ダクトの原状復旧が費用・工期のボリュームゾーンです。外装・共用部に関わる作業は管理会社の承認が必須で、夜間・早朝指定や騒音抑制が求められることがあります。ビルや自治体のルールにより、屋外広告物の撤去・抹消手続きが必要となる場合もあります。


設備・箇所別 原状復旧の要点と追加費用リスク
設備・箇所 復旧の要点 必要な証明・届出の例 追加費用のリスク要因
看板(袖・壁面・屋上) 本体撤去、支持金物・アンカー抜き、躯体補修、仕上げ復旧 屋外広告物関係の撤去・抹消手続き(必要時)、撤去前後写真 高所作業・道路占用が必要、外装材の大面積補修が発生
グリストラップ 汚泥・油脂の回収、槽内洗浄、配管の閉塞確認、臭気対策 汚泥の産業廃棄物管理票(マニフェスト)控 堆積量過多による回収車両増便、配管詰まりの修繕
厨房機器 機器撤去、ガス・電気端末処理、床・壁の下地補修 ガス閉止記録(必要時)、撤去前後写真 重量物搬出の追加人員、養生強化、夜間搬出指定
排気・グリスダクト フード・ダクト・ファン撤去、開口部の防火・防煙復旧 ダンパー復旧写真、必要に応じ点検記録 共用ダクト接続部の指定工法、屋上機器の揚重許可
給排水・ガス栓 盲蓋・止水、封水の確保、漏水・漏えい無しの確認 通水試験・気密試験記録(必要時) 共用系統の停止時間帯制約、漏水是正の再施工
屋上ファン・室外機 撤去、屋上防水の原状復旧、配線撤去・端末処理 冷媒回収証明、撤去前後写真 屋上作業の申請・強風順延、クレーン・搬出路の制約
防臭・防水 トラップ封水、臭気戻り防止、床防水の損傷補修 臭気確認・写真 長期未使用による封水切れ、隠れた漏水の発覚


看板は外装仕上げの復旧範囲が読みにくく、撤去前の試しめくりや、仕上げ材の品番特定・同等品合意を先に取り付けると追加の抑制につながります。グリストラップやダクトは臭気・油脂が残ると再清掃の是正を求められやすいため、作業直後の立会い確認が有効です。


変更指示 追加工事 請求書と支払い条件

原状回復工事では、既存の隠れた状況や管理側の検査指摘により変更・追加が生じやすく、口頭指示ではなく「変更見積→書面承認→施工→完了報告→追加請求」の順序を守ることが予算管理の基本です。工程に影響する場合は、工程表・搬出計画も同時に更新し、退去日へ影響するリスクを関係者で共有します。


変更管理で用いる代表的な書類
書類 目的 起案・承認 タイミング
変更見積書 費用・工期影響の可視化 施工会社起案/テナント承認 施工着手前
変更指示書・追加契約書 発注内容の確定・証跡化 テナント発行/施工会社合意 変更見積承認後
工程変更届 工期・夜間作業・搬出枠の調整 施工会社起案/管理会社承認 工程変動時
現場指示記録 口頭指示の書面化・合意形成 施工会社記録/関係者確認 随時
是正報告書 検査指摘の対応完了通知 施工会社提出/管理会社・貸主確認 検査後
追加請求書 追加分の請求・支払処理 施工会社発行/テナント支払 完了・検収後


請求・支払いでは、契約書に「着工金・中間金・完了金」などの支払い条件、検収の方法、必要書類(引渡書、写真帳、マニフェスト、試験記録、適格請求書の記載)を明文化しておくと実務が円滑です。保証金・敷金の精算と相殺の有無、請求・支払の締日と支払日、遅延時の取り扱いも明記しておきましょう。なお、引渡し後の是正指示は軽微なものをのぞき契約外となるため、変更管理のプロセスに乗せて合意形成することが肝要です。


東京のビルでの施工ポイント 騒音 粉じん 近隣対応


東京都内の店舗・オフィスの内装解体は、高層・複合用途ビルや商業施設などの共用部を通って資材搬出入を行うため、騒音・粉じん・振動の管理、養生品質、近隣テナント対応、そしてビル管理会社や防災センターとの調整が工期とコストを左右します。共用部の保護と環境負荷の低減、近隣への事前周知と即応の仕組みをセットで設計しておくことが、クレーム回避とスムーズな原状回復の鍵になります。


養生 エレベーター養生 防音防塵 夜間作業

「傷を付けない・音を出さない・粉じんを出さない」を現実レベルに落とし込むには、搬出動線と仮設の設計、工具選定、時間帯の切り分け、計測と記録、そしてエレベーター運用の最適化が基本となります。


共用部の養生と動線設計

床・壁・柱・ドア枠・角部は合板と防滑養生シートの二重養生、エントランスや長い廊下には台車ルートの段差解消スロープを設置し、荷捌き場からテナント区画までの搬出ルートを明確にします。避難経路・消火設備・非常口を塞がない配置とし、工事前後にビル管理会社立会いで養生範囲と現況キズを写真記録します。ビル共用部は原状回復が前提で、傷や汚損は損害賠償の対象になり得るため、養生品質と点検手順を現場ルールとして徹底します。


エレベーター養生と予約運用

荷物用エレベーターの使用時間・荷重・サイズを事前確認し、かご内壁・床・扉・出入口の角をパネルと合板で養生します。使用枠の予約、台車の台数制限、上下搬送の定時運行、扉開放時間の管理、積み過ぎ防止など、管理会社・防災センターの運用ルールに合わせて計画し、終業時の養生点検と原状復旧までを工程に含めます。


防音・防塵の計画

テナント区画の出入口に二重扉(ジッパードア)を設け、室内は防音パネルや遮音・防炎シートで仮囲い、集じん機で負圧化して粉じんの共用部への漏えいを抑えます。切断・斫りは湿式(散水・集水)を基本とし、HEPAフィルター搭載のエアスクラバー・集じん機を併用、出入口には粘着マットを設置して微細粉じんの持ち出しを防止します。臭気の発生が想定される工程(接着剤除去・グリストラップ撤去等)は換気計画を併せて立てます。


騒音・振動管理と工具選定

斫り・コア抜き・アンカー撤去などの高騒音工程はビルの許容時間帯に集約し、静音型ハンマードリルや低騒音コアドリル、ダイヤモンドカッターの先行切りで振動と割れを抑制します。エンジン式機械の室内使用は避け、電動工具に統一、騒音計・振動計で実測し、閾値や苦情発生ラインを運用基準として共有します。高感度機器や静穏を求めるテナント(撮影スタジオ・コールセンター等)が同フロアにある場合は工程入替や夜間へのシフトで影響を回避します。


夜間・早朝作業の運用

日中に業務稼働があるビルでは夜間・早朝の無人時間帯に騒音工程と搬出を寄せることが有効です。深夜はエレベーター予約・警備体制・荷捌き場の開放時間を事前に確定し、照明・仮設電源の安全確保、近隣住宅地への音の回折を考慮した積み込み手順(落下音防止・静音台車の使用)を徹底します。夜間作業は騒音対策の切り札である一方、警備や搬出手配の追加運用が必要になるため、コストとリスクを天秤に掛けた工程設計が重要です。


対策 主な目的 使用箇所の例 施工時の注意点
共用部二重養生(合板+防滑シート) 傷・汚れ・滑り防止 共用廊下・エントランス・荷捌き場 避難経路と消火設備を塞がない配置、端部のめくれ防止を徹底
エレベーターかご・出入口のパネル養生 かご内壁・扉・枠の保護 荷物用エレベーター 荷重・サイズ遵守、運用時間の予約、終業時の原状点検
負圧養生+HEPA集じん 粉じんの漏えい防止 テナント区画内の仮囲い空間 給気・排気バランス、出入口二重化、差圧とフィルターの管理
防音パネル/遮音シート 騒音の遮断 仮囲い、共用部に面する開口部 隙間の目張り、伝播しやすい躯体接合部の補強
湿式切断・散水 発じん抑制・切断効率向上 コンクリート切断・タイル撤去 養生内での集水と床養生、乾燥前の清掃と搬出
粘着マット・二重扉 微細粉じんの持ち出し防止 区画出入口・共用廊下への開口 マット交換頻度の設定、ジッパードアの確実な開閉
騒音・粉じんの環境計測 客観把握・苦情予防 区画外の共用部・隣接テナント境界 作業前後の基準化、記録と共有、工程の入替判断に活用


近隣挨拶 警備 セキュリティ 休業損害リスク

都心ビルの内装解体は、テナント営業やオフィス稼働と並行するのが一般的です。事前の周知・当日の警備運用・万一の初動体制をひとつの計画にまとめ、管理会社や防災センターと共有しておくことで、苦情やトラブルを大幅に減らせます。


近隣テナント・管理会社への周知と挨拶

工事の目的・期間・作業時間帯・想定される騒音や振動・搬出日程・責任者の連絡先を記した「工事のお知らせ」を掲示・配布し、エレベーター内掲示やフロア掲示板への周知は管理会社の承認を得ます。日次の作業予告や工程変更の速報、緊急連絡フローを明記し、受付・電話・メールなど複数チャネルを用意します。周知の質と頻度は苦情の発生率に直結するため、定型文ではなくフロア事情に合わせた具体的な情報提供が有効です。


警備・誘導と共用部の安全管理

搬入出のピーク時は交通誘導警備員を配置し、エレベーターホールや曲がり角の見通し確保、カラーコーン・バリケード・注意喚起サインで歩行者の安全を守ります。作業区画の入退室管理、仮設の転倒・落下物対策、通勤時間帯の台車通行制限などを含めた警備計画を防災センターと共有します。朝礼での危険予知(KY)・リスクアセスメントを習慣化し、ヒヤリハットの記録と是正を迅速に回します。


セキュリティと入退館管理

作業員名簿・身分証・入館証の運用、鍵の受け渡し台帳、最終退館時の施錠確認を徹底します。セキュリティゲート付きビルでは通過ルートの登録と搬出品の事前申請を行い、監視カメラのある共用部での荷待ちや滞留を最小化します。機密情報が残るオフィスでは残置物の写真確認・指示系統の一本化で持ち出し・誤廃棄のリスクを抑えます。


休業損害リスクの把握と回避策

典型的な損害は、排水切断時の漏水、ブレーカー誤操作による停電、振動で什器・商品が落下する物損、粉じんや臭気の侵入による営業支障です。試験通水と仮封、回路表示・ブレーカー施錠、振動工程の時間帯分散と事前告知、負圧養生と換気の強化で予防します。万一発生時は、作業停止・関係先への即時連絡・被害範囲の写真記録・応急復旧・原因究明という初動を標準化しておきます。


想定リスク 主な予防措置 初動対応 記録・報告
漏水(給排水切回し時) 止水・仮栓・試験通水、受け皿・ウエス常備 即時止水・被害範囲の保全・乾燥と除湿開始 配管系統図・写真・発生時刻・流出経路を整理
停電(誤操作・過負荷) 回路表示・ブレーカー施錠、仮設電源の容量設計 復電手順に従い段階投入、影響先へ即時連絡 負荷電流・時系列・対象回路の記録
粉じん侵入・臭気苦情 負圧養生・二重扉・湿式工法・換気計画 原因工程の停止・清掃・換気強化 差圧・計測値・工程ログの保存
振動・騒音による営業支障 時間帯集約・静音工具・工程入替 騒音工程の一時中断・代替手順への切替 騒音計測値・影響範囲・告知履歴を報告
セキュリティ事故(施錠・持出し) 鍵台帳・入退館管理・搬出品申請 関係先への即時通報・監視記録確認 名簿・台帳・映像の突合と再発防止策


電気 給排水 空調 防災設備の切り回しと復旧

設備の切回しは工程の要です。電気・給排水・空調・防災設備の各担当業者とビル管理会社、必要に応じて東京消防庁の関係先と連携し、停止・復旧のタイミングを工程表に織り込みます。


電気設備の切り回しと仮設電源

分電盤の回路構成と容量を確認し、撤去系統の分離、仮設分電盤の設置、漏電遮断器・感電防止の保護具を準備します。照度確保のための仮設照明は避難経路の妨げにならないよう高所配線とし、ケーブルは養生スロープで段差解消します。停電を伴う作業は管理会社・防災センターと調整し、有資格の電気工事士が実施します。


給排水の止水・封鎖と臭気対策

止水バルブ位置と系統を特定し、同フロアや下階への影響を把握したうえで切回しを行います。排水管は仮栓・キャップで封鎖し、臭気の逆流を防止、グリストラップは残渣を清掃・搬出後に撤去します。作業後は試験通水と漏水確認、床の洗浄・乾燥で臭気・滑りのリスクを除去します。


空調設備とフロン類回収の手順

空調機の撤去では、冷媒配管の切断前に冷媒回収を行い、配管端末は密閉処理します。ドレン系統の切回し・封水の維持、断熱材の撤去・廃棄、天井点検口の復旧を工程に含めます。冷媒の回収はフロン排出抑制法に基づき、登録された第一種フロン類回収業者による適正回収と証明書の取得が必要です。


防災設備の誤作動防止と復旧

自動火災報知設備(感知器)やスプリンクラー、非常放送、誘導灯等への影響を事前に洗い出し、粉じんや蒸気を伴う工程では消防設備業者・管理会社の立会いで一時的な誤報防止措置と復旧を行います。火花を生じる切断・溶断は火気使用申請のうえ、監視員・消火器の常備・可燃物の除去を徹底します。復旧後は作動試験と記録を残し、東京消防庁の指導に従った運用を守ります。


設備種別 主な調整先 事前確認事項 工事前に必要な手続き
電気 電気工事会社・ビル管理会社・防災センター 回路図・容量・停電可否・復電手順 停電申請・作業計画の共有・入退館手配
給排水 設備工事会社・ビル管理会社 止水位置・系統影響・試験通水方法 断水申請・仮封計画・搬出動線の衛生管理
空調 空調工事会社・第一種フロン類回収業者 機器構成・冷媒種類・ドレン処理 冷媒回収手配・証明書発行・作業時間調整
防災設備 消防設備業者・ビル管理会社・東京消防庁の関係先 感知器・スプリンクラーの影響範囲・誤報防止策 工事申請・一時停止/復旧の立会い手配・火気使用申請


これらの施工ポイントを実行計画・工程表・チェックリストに落とし込み、計測記録と写真で「見える化」することで、騒音・粉じん・近隣対応の品質を安定させ、東京のビル特有の運用制約下でも安全かつ確実に内装解体を進められます。


施工会社の選び方とチェックリスト


東京都内での内装解体は、法令遵守・安全管理・近隣配慮・工程管理の4点を満たす施工会社を選ぶことが品質と納期を左右します。テナント原状回復やスケルトン化は「同じ解体」でもビル規約や搬出条件で難易度が大きく変わるため、許可・資格の裏付け、現地調査の精度、見積内訳の透明性、引渡し後の是正体制まで、客観的に確認できる材料で比較検討することが重要です。


解体工事業登録 労災保険 損害賠償保険の確認

「許可・登録・保険」は、価格より先に確認すべき最低条件です。特に東京都のテナント解体では、産業廃棄物の適正処理と共用部での安全管理が不可欠なため、許可番号や有効期限、加入証の写しを発注前に取得し、見積書と一緒に社内回覧できる状態にしておくとトラブルを未然に防げます。


確認項目 根拠・対象業務 確認書類・見るポイント 注意点/NGサイン
解体工事業の建設業許可/解体工事業登録 内装解体一式(契約金額に応じて許可または登録) 許可証・登録通知の写し(都知事/国土交通大臣、業種「解体」、有効期限) 業種が「とび・土工」などで代替、期限切れ、「申請中」のみは避ける
産業廃棄物収集運搬業許可 解体で発生する産業廃棄物の収集・運搬 東京都および搬出先都県の許可証(品目に「がれき類・木くず・金属くず・石膏ボード」等) 東京都の許可のみ、品目不足、許可車両不一致は要注意
特別管理産業廃棄物収集運搬業許可 アスベスト含有廃棄物等の運搬 特別管理の許可証(対象品目・車両・有効期限) アスベスト可能性があるのに特管許可なしはリスク
産廃処分委託契約・マニフェスト 中間処分・最終処分への適正委託・管理 処分場との委託契約書、マニフェスト(紙/電子)発行体制 「マニフェストは出せない」は不可、委託契約の品目不足はNG
労災保険・雇用保険・社会保険 労働災害・就労者の保護 労働保険加入票、社会保険加入の証明 一人親方の多用、未加入、下請任せは避ける
損害賠償保険(請負業者賠償、施設・受託者賠償) 共用部破損、漏水、第三者事故への備え 対人・対物の補償額、免責有無、工事保険の付帯 ビル内工事なのに賠償保険未加入は高リスク
石綿関連の体制 石綿含有建材調査・特定工事の管理 建築物石綿含有建材調査者の資格、石綿作業主任者の選任予定 外部任せのみで責任分担不明、資格者不在は要注意
フロン類回収の手配 空調機撤去時のフロン回収・証明書 第一種フロン回収業者の登録、証明書の発行フロー 撤去のみ記載、回収・証明書未記載は後日トラブルに


上記は最低限の一次チェックです。あわせて「施工体制台帳・作業員名簿・安全書類(グリーンファイル等)の整備状況」や「現場監督の常駐体制」も確認すると、品質と安全性の総合力が見えます。


見積書 単価 内訳の比較ポイント

複数社の見積比較は「同一仕様・同一前提」で行い、数量と単価が分かる内訳で揃えることが要点です。図面・現況写真・テナント契約(原状回復範囲)・搬出条件(エレベーター・時間帯・養生範囲)を共通配布し、「一式」表記のままではなく、主要品目を数量化してもらいましょう。


主要費目 含まれる作業例 典型的な課金単位 交渉・確認ポイント
養生・共通仮設 共用部・エレベーター養生、仮設電源・照明、粉じん対策 式/m² 範囲図の有無、エレベーター養生の復旧費含むか
解体工・撤去 天井・間仕切り・造作・床・什器、スケルトン化 m²/m/式 仕上げ種別別の単価、直貼り・二重天井・OAフロアの扱い
はつり・コア抜き GL工法のボード、モルタル下地、ダクト開口補修 箇所/m² 躯体不可侵の範囲、耐火被覆の復旧条件
設備撤去 電気・給排水・空調・弱電・消防設備の切離し 式/回路・系統数 有資格者作業の有無、消防設備停止・復旧費の含み
産廃運搬・処分 分別解体、品目別処分、台貫計量、マニフェスト t/m³/m² 品目別単価、処分場名、電子マニフェスト対応
美装・クリーニング 床・壁・共用部清掃、引渡し整備 式/m² 引渡基準の明記、ビル側立会の対応
夜間・休日割増 夜間搬出、騒音作業時間制限対応 %(割増)/式 発生条件・時間帯、警備員手配の要否
諸経費・安全衛生費 現場管理、人件費、安全対策、近隣対応 %/式 根拠の内訳、現場常駐の有無


「残置物撤去」「アスベスト調査・除去」「消防設備・警備・路上占用・駐車場費用」「フロン回収」「看板・ダクト・グリストラップ」などが見積書に明記されていないと、着工後の追加費用になりやすいため、発生条件と単価を事前に取り決めます。工事写真台帳・マニフェスト・引渡書の提出有無と費用も忘れず確認しましょう。


現地調査の精度 現場条件 エレベーター 搬出ルート

短工期になりがちな東京のテナント解体では、現地調査の精度が工期と追加費用を左右します。躯体構造(RC・S・SRC)やテナント境界、耐火区画、共用部動線、荷捌き場、エレベーターのサイズ・荷重、騒音・粉じんルール、作業時間帯(夜間制限)など、ビル管理会社の工事申請条件に直結する要素を初回調査で洗い出す会社を選びます。


現場条件 具体の確認方法 見落とし時の影響 コスト・工期への波及
エレベーター養生・荷重・カゴ寸法 管理規約、実測(間口・奥行・高さ、許容荷重の表示) 大型廃材が入らず人力小運搬に転換 人工増・搬出日数増、夜間割増の発生
搬入出時間帯・荷捌き場 ビル申請書式、警備室ヒアリング、予約制の有無 予約が取れず停滞、路上占用手配が後手 警備員・占用許可費、工程遅延のリスク
騒音・振動・粉じん規制 管理規約、近隣テナントの業態(オフィス・クリニック等) 斫り・はつり時間の制限、クレーム 工法変更、夜間作業割増の追加
仕上げ・下地工法 床(モルタル厚・直貼りの有無)、壁(GL工法)、天井(二重)を試験撤去で確認 想定以上のはつり・補修が発生 追加費用・工期延長、粉じん対策の増強
設備の切回し・残置の可否 電気系統図、止水位置、消防・空調の共用部接続点 漏水・停電リスク、消防誤作動 資格者手配費、復旧試験立会の追加
石綿含有可能性の判定 既存図書、目視特定、必要に応じて分析試料採取 着工後に発覚し全工程ストップ 調査・除去・特管産廃費、工期再編成
厨房・ダクト・グリストラップ ダクト経路・防火ダンパー、槽内残渣、臭気対策 撤去不可・臭気苦情、追加清掃 高所作業・防火区画補修・産廃費の増
共用部復旧範囲 原状回復基準書、テナント境界の納まり写真 引渡時の指摘・是正工事 最終週の手戻り、延長費用


優良業者は、上記を踏まえた工程表・施工計画書・搬出計画図(養生図・動線図)を現地調査後に提示します。「現地調査が短時間で、数量根拠や工程・搬出計画の説明がない見積は、着工後の条件変更や追加費のリスクが高い」と考え、再調査や条件整理を依頼しましょう。


アフター対応 瑕疵の是正と保証

原状回復の成否は引渡し時点ではなく、引渡し後の指摘に迅速・無償で是正できる体制にかかっています。ビル管理会社の退去立会やオーナー確認で補修指摘が出ることを想定し、是正の範囲・期限・連絡窓口を契約前に明文化しておくと安心です。工事写真台帳、マニフェスト、引渡書(鍵・メーター・設備停止復旧の記録)は必須書類として取り決めます。


項目 推奨される取り決め 確認資料・成果物 要注意ポイント
是正対応 無償是正期間・対象(撤去漏れ、養生痕、粉じん・臭気、共用部破損)を明記 是正依頼書式、連絡先、対応期限の合意 「別途見積」での切り分けが多い条件は避ける
保証・安全 損害賠償の上限・適用範囲、緊急時の一次対応(漏水・停電) 保険証券の写し、緊急連絡体制図 下請け作業時の賠償範囲が不明確
引渡書類 工事写真台帳、産業廃棄物マニフェスト(電子可)、撤去・搬出数量表 ファイル納品形式・提出期限の設定 提出時期未定、電子データ不可は後日の証跡不足
ビル立会・検収 ビル管理会社立会の段取り、事前是正の中間検査 検査チェックリスト、指摘事項の記録とクローズ 立会日程の後ろ倒しは退去遅延・違約の火種
変更・追加の運用 変更指示書・現場打合せ記録で単価・数量・工期の同意 サインオフのルール(メール可否、期日) 口頭合意のみは誤解・請求トラブルの原因


支払い条件(着手金・中間金・完了金)や遅延時の取り扱いも、工程とセットで取り交わしましょう。「是正・引渡書類・変更手続き」が契約書に書かれている会社ほど、引渡し品質とトラブル時の対応が安定します。


事例で学ぶ 東京の内装解体 価格と工期の目安

ここでは、東京都心で内装解体を計画する際に遭遇しやすい条件をモデル化し、価格帯と工期の目安、工程の組み方、追加費用が生じやすい要素を事例から具体的に示します。いずれも実務に基づく目安であり、最終金額は現地調査・テナント契約・ビル管理会社の工事ルール・搬出条件(荷捌き場の有無、エレベーターの可否、時間制限)などにより確定します。


新宿区のオフィス スケルトン 30坪の例

西新宿エリアの中規模オフィスビル。貸室は30坪(約99㎡)、入居時の造作一式を撤去し、貸与時点のスケルトンへ原状回復。管理会社の工事申請が必要で、平日日中のみ作業可能。荷捌き場は時間予約制、共用部はエレベーター・廊下とも全面養生。石綿含有建材調査は事前実施し非検出。産業廃棄物はボード・木くず・金属くず・混合廃棄物を分別し、許可車両で搬出します。


項目 内容
所在地・用途 新宿区/オフィス区画(30坪)
解体範囲 間仕切り・天井ボード・床材(タイルカーペット/OAフロア)・造作家具・サーバーラック等の撤去、電気(照明・コンセント・弱電)・給排水・空調室内機の撤去(ビル共用幹線手前で切り離し)
搬出条件 荷物用エレベーター1基/予約制、共用部・エレベーター養生必須、荷捌き場30分枠
作業時間 平日 8:00–18:00(騒音作業は管理会社指定時間内)
法令・申請 解体工事業登録・産廃収集運搬許可の確認、石綿含有建材事前調査の実施と結果掲示、工事申請書・工程表・施工計画書の提出
工期目安 6営業日(現地調査〜引渡しは約2–3週間)
費用目安 合計 約120万〜160万円(税別)/坪単価 約4.0万〜5.3万円
費目 内容・範囲 目安金額(税別)
仮設・養生 共用部・エレベーター・室内の防音・防塵・キズ防止養生 12万〜18万円
解体・撤去工 造作・間仕切り・天井・床材・OAフロア撤去 58万〜74万円
電気・弱電撤去 照明・コンセント・LAN/電話配線の撤去・整理 12万〜18万円
空調・給排水撤去 室内機・露出配管撤去、共用幹線手前での切離し 10万〜16万円
産廃運搬・処分 分別積込・収集運搬・中間処理、マニフェスト交付 24万〜34万円
現場管理費等 現場管理・安全対策・諸経費 8万〜12万円
石綿事前調査 採取・分析(必要範囲)・報告書作成 6万〜12万円(別途)
日数 主な作業 留意点
1日目 共用部・室内養生、近隣挨拶、工程打合せ 粉じん・騒音対策、エレベーター予約枠の最適化
2–3日目 造作・間仕切り・天井解体、電気・弱電撤去 躯体・共用幹線の損傷防止、火気作業要否の確認
4日目 床材・OAフロア撤去、空調・給排水撤去 搬出動線の清掃維持、重量物の分割搬出
5日目 分別搬出、最終残材処理 マニフェスト伝票整理、荷捌き場の時間厳守
6日目 美装・原状確認・是正、管理会社立会い 引渡範囲の線引き確認、是正対応の即日完了


エレベーター制限や荷捌き場の予約が厳しい新宿エリアでも、30坪のスケルトンであれば日中作業のみで約6営業日・坪4〜5万円台が現実的な目安です。


追加費用の発生要因としては、夜間・休日作業への切替(+15〜30%)、解体対象外の残置物の追加処分(物量実費)、エレベーター不使用による階段搬出(人員増)、想定外の下地補修が挙げられます。


渋谷区の物販店舗 原状回復 20坪の例

渋谷駅徒歩圏の路面店舗。20坪(約66㎡)で、物販什器・レジ台・フィッティング造作の撤去、壁天井補修と塗装の復旧、床材(長尺シート/タイル)の剥離と下地調整、袖看板・ファサードサインの撤去を含む原状回復。商店街ルールにより騒音・粉じんの時間帯制限があり、夜間搬出の一部併用。道路使用や仮設足場が不要な範囲で実施。


項目 内容
所在地・用途 渋谷区/物販店舗(20坪)
原状回復範囲 什器・造作撤去、壁天井の下地補修・塗装、床材剥離・下地調整、設備撤去と端末処理、袖看板・壁面サイン撤去(高所作業車なしの範囲)
搬出条件 店舗前面から台車搬出、深夜帯に一部搬出、共用部・歩道の保安員配置
作業時間 日中(騒音制限あり)+一部夜間搬出
法令・申請 工事申請、近隣挨拶、必要に応じ路上占用・道路使用の確認、マニフェスト交付
工期目安 3〜5営業日
費用目安 合計 約64万〜96万円(税別)/坪単価 約3.2万〜4.8万円(看板撤去は別途になりやすい)
費目 内容・範囲 目安金額(税別)
什器・造作撤去 棚・レジ台・フィッティング関連の撤去 10万〜18万円
内装解体 壁・天井の軽微解体、補修 22万〜35万円
床材剥離・下地 長尺シート/タイル剥がし、下地調整 6万〜12万円
設備撤去・端末処理 電気端部処理、給排水キャップ、簡易復旧 6万〜12万円
産廃運搬・処分 分別・運搬・処分、マニフェスト交付 10万〜18万円
仮設・養生・管理 仮設・養生・保安要員・現場管理 10万〜15万円
看板撤去 袖看板・壁面サイン撤去(高所作業なし) 8万〜25万円(別途)
日数 主な作業 留意点
1日目 養生、什器撤去、看板撤去段取り 歩道側の安全対策・保安員配置
2–3日目 内装解体、床材剥離、壁天井補修 粉じん飛散の管理、近隣への騒音配慮
4日目 設備端末処理、残材分別・搬出 夜間搬出で交通・騒音ルール遵守
5日目 美装、原状確認、是正、引渡立会い 契約の原状範囲と引渡書の記載確認


物販の原状回復は「撤去+軽微復旧」が中心のため、20坪で3〜5日・坪3.2万〜4.8万円が目安。看板や夜間搬出が費用を押し上げやすい点に注意が必要です。


追加費用の典型は、袖看板の高所作業(設置高さ・固定方法で変動)、夜間作業加算(+15〜25%)、想定外の下地損傷補修、残置物の追加処分(物量実費)です。


千代田区の飲食店 厨房あり 25坪の例

オフィス街の雑居ビル内、25坪(約83㎡)の居抜き飲食店。グリストラップ汚泥の回収・清掃、厨房機器一式の撤去、フード・排気ダクトの撤去または切離し・防火処理、床防水層周りの処置、ガスの閉栓手配(ガス事業者対応)、給排水端末処理、臭気対策を含む。ビルの防災設備(感知器・排煙)への影響に配慮し、管理会社・消防関係の工事申請に基づいて実施します。


項目 内容
所在地・用途 千代田区/飲食店(厨房あり・25坪)
解体・撤去範囲 厨房機器・カウンター・造作、グリストラップ汚泥回収・清掃、フード・ダクト撤去/切離し、防火ダンパー周りの処置、床・壁・天井の解体
搬出条件 荷物用エレベーター+階段併用、重量機器は分解搬出、深夜帯の搬出枠利用可
作業時間 日中中心+騒音・臭気対策のため一部夜間
法令・申請 石綿調査、工事申請、産業廃棄物管理票(マニフェスト)交付、ガス閉栓・通水停止手配
工期目安 7〜10営業日(汚泥回収・洗浄日を含む)
費用目安 合計 約165万〜230万円(税別)/坪単価 約6.6万〜9.2万円
費目 内容・範囲 目安金額(税別)
仮設・養生・防臭 養生、防臭・防油対策、負圧養生 18万〜28万円
厨房機器撤去 什器分解・搬出、配線配管の端末処理 28万〜45万円
ダクト・フード 撤去 or 切離し・防火措置(ビル規定順守) 20万〜38万円
グリストラップ 汚泥回収・清掃・処分(汚泥は産業廃棄物) 12万〜20万円
内装解体 床・壁・天井解体、下地調整 35万〜55万円
産廃運搬・処分 分別・運搬・処分、マニフェスト交付 28万〜42万円
現場管理・諸経費 安全衛生・是正対応・工程管理 14万〜22万円
日数 主な作業 留意点
1日目 養生・防臭、防災設備の停止・養生手配、近隣挨拶 臭気漏洩を防ぐ負圧管理、火気作業有無の調整
2–3日目 厨房機器分解・撤去、電気・ガス端末処理 重量物の小運搬計画、エレベーター養生の強化
4日目 グリストラップ汚泥回収・清掃 産廃(汚泥)として適正処理、作業後の消臭
5–6日目 ダクト・フード撤去/切離し・防火処置、内装解体 防火ダンパー・共用ダクト規定の順守
7–8日目 分別搬出、仕上げ・美装 油分の再付着防止、共用部清掃の徹底
9–10日目 最終是正、管理会社立会い、引渡し チェックリストに基づく原状確認、マニフェスト整理


厨房・グリストラップ・ダクトを含む飲食店の解体は、同規模のオフィスや物販よりも工期・費用が増加しやすく、25坪で7〜10日・坪6.6万〜9.2万円が現実的な目安です。


費用を押し上げる要因は、汚泥処分や油汚れ対策、重量機器の分解搬出、夜間枠の活用、共用ダクトの取り扱いルール、臭気対策の追加措置などです。これらは工程表・施工計画書に織り込んで事前合意すると是正が最小化できます。


上記3事例の共通ポイントとして、工程表と搬入出計画の実効性、テナント契約における原状の線引き、石綿調査結果の有無、産業廃棄物の分別・マニフェストの確実な交付、そして管理会社との事前協議が、価格・工期のブレを抑える鍵になります。


よくある質問 Q&A


産業廃棄物の処分証明 マニフェストはもらえるか

内装解体で発生する産業廃棄物は、法律に基づきマニフェスト(産業廃棄物管理票)で管理されます。発注者は、工事完了後に「マニフェストの写し」または「電子マニフェスト(JWNET)の完了確認印字」等のエビデンスを受け取るのが一般的です。紙・電子のどちらで運用するかは受託会社によって異なるため、見積・契約段階で提出物を明記しておきましょう。


提出のタイミングは、運搬・中間処理・最終処分の進捗に左右されます。とくに混合廃棄物や石膏ボードは中間処理工程が入るため、最終処分完了の報告までに数週間〜数カ月かかることがあります。電子マニフェストの場合は、完了報告ステータスの印字またはスクリーンショットの提供が多く、紙マニフェストの場合はE票(最終処分終了)の返送写しを受領します。


なお、マニフェストや処分証明に関する書類は、法令に基づき5年間の保管が求められます。社内やテナント退去に伴う原状回復の証跡として、見積書・契約書・工事写真(着工前・養生・解体・搬出・美装・引渡し)と合わせて一式で保管すると、退去立会いや後日の確認がスムーズです。


書類種別 交付形態 受領時期の目安 主な交付者 保管義務
産業廃棄物管理票(紙マニフェスト)の写し 紙の写し(スキャンPDF含む) 運搬・処分の各工程完了後〜最終処分終了後 元請(解体会社) 5年
電子マニフェスト(JWNET)完了報告の印字 PDFまたは画面印字 完了報告登録後(比較的早い) 元請(解体会社) 5年(記録の保存)
処分証明書(中間処理・最終処分) 紙またはPDF 最終処分完了後 処分事業者経由で元請 5年(推奨)


実務上は、マニフェストに加えて、積込・運搬・計量伝票、分別内訳、搬出ルートやエレベーター養生の写真、マニフェスト番号一覧などをまとめて提出する会社もあります。発注時に「提出物一覧(マニフェスト写し・処分証明・完了報告書・工事写真)」を見積書に記載してもらうと、受け渡しの漏れを防止できます。


夜間作業は追加費用がどれくらいかかるか

東京都心のオフィスビルや商業施設では、搬出時間帯の制限やエレベーター予約枠の都合で夜間作業が必要になることがあります。夜間作業の割増は、労務費の深夜加算(22:00〜5:00の深夜割増など)や警備員・立会い費、近隣配慮のための防音・防塵強化費用が重なり、総額で日中比+15〜40%が目安となるケースが多いです。ただし、建物管理規約や搬出条件により変動します。


時間帯・条件 割増の目安 主な理由 留意点
夕方〜21時台の延長作業 +10〜20% 人員の時間外手当、管理会社の立会い延長 騒音制限で手作業中心になり生産性が低下
22:00〜5:00の深夜作業 +20〜40% 深夜割増賃金、警備員配置、深夜搬出の手配 トラック手配・駐車場代が割高、荷捌き場の制限
全館停止に伴う限定時間帯(早朝のみ等) +25〜45% 短時間高密度の人員投入、工程の分割・段取り増 養生の設置・撤去を毎回繰り返すためコスト増


夜間化に伴う付帯費の典型は、エレベーター専有費・操作員費、警備員増員、防音パネルや集じん機の追加、近隣挨拶の強化、車両の待機費・回送料などです。見積比較の際は、夜間割増の算定根拠(人員数・時間・単価)と「警備・立会い・搬出経路の管理費」が内訳として分かれているかを確認しましょう。


コストを抑えるには、粉じんや騒音の大きい工程を管理会社の許容時間帯に集約し、夜間は搬出や美装中心にするなど工程の切り分けが有効です。夜間作業の要否・頻度・時間帯は、ビル管理規約と搬出動線(荷捌き場・エレベーター予約枠)でほぼ決まるため、現地調査時に必ず事前確認を行いましょう


アスベストが見つかった場合の対応

内装解体中にアスベスト(石綿)含有の疑いが生じた場合は、その場で作業を中断し、区域を封鎖して有資格者による事前調査(分析を含む)を実施することが最優先です。法令に基づく届出と適切な工法(隔離・負圧養生、湿潤化、個人防護具の着用、集じん・排気)へ切り替え、確実な産業廃棄物処理を行います。東京都では、所管への事前調査結果の報告が電子システムで求められています。


2023年10月以降、原則として有資格者(例:一般建築物石綿含有建材調査者等)による事前調査が必要とされています。調査結果に応じ、解体計画・工程表・見積を見直し、ビル管理会社・テナント・オーナー・関係施工業者へ速やかに共有します。除去工事は専門業者が担当し、完了後は目視確認や必要に応じた測定、清掃(美装)を経て引渡しとなります。


対応ステップ 必要書類・手続き 主なポイント
疑い発生・作業中断・区域隔離 立入禁止表示、一次養生 粉じん飛散の防止と安全確保を最優先
有資格者による事前調査・分析 事前調査結果の報告(電子)、調査記録 調査結果は全関係者で共有、工程・見積を更新
工法決定・届出・計画見直し 作業計画書、リスクアセスメント 隔離・負圧養生、湿潤化、保護具・集じん機の手配
除去・封じ込め・囲い込み等の施工 作業記録、写真、関係者立会い 法令・管理規約を順守し近隣への周知も徹底
清掃・確認・廃棄物処理 マニフェスト、処分証明 適正処理と記録保全、引渡し前の最終確認


アスベスト対応は工期・費用への影響が大きいため、調査の早期実施と、代替工程(先行できる養生・残置物撤去など)の並行化が鍵です。有資格者の調査・届出・適正処理を経ずに解体を継続することは、重大な法令違反につながるため厳禁です


退去日まで時間がない場合の進め方

退去期限が迫る原状回復では、まずビル管理会社・オーナーとの合意(工事申請の承認、搬出ルール、作業時間帯)を最優先で取り付けることが重要です。承認前の無断着工はトラブルのもとになるため、最短ルートでも「申請→承認→着工」を守りながら、並行して調査・段取りを進めます。


短納期対応の実務ポイントは、現地調査の即日実施、工程の圧縮(騒音工程の時間帯集約、夜間は搬出中心)、残置物撤去と養生の先行、エレベーター養生・予約枠の確保、路上占用や荷捌き場の事前調整、警備・立会いの手配です。電気・給排水・空調・防災設備の停止や切り回しは、防火管理者・管理会社の指示に従い、東京消防庁の関係手続きが必要な場合は速やかに対応します。


優先順位 タスク 主な担当 必要書類・確認事項
最優先 工事申請の要件確認・提出 施工会社・発注者 工事計画書、工程表、養生図、保険証券、誓約書、搬出計画
現地調査・見積・仕様確定 施工会社 原状回復範囲、設備の撤去範囲、搬出動線、夜間要否
搬出・荷捌き・エレベーター予約 施工会社・管理会社 使用枠、操作員・警備手配、騒音時間帯の遵守
残置物撤去・仮設・養生の先行 施工会社 分別計画、追加費用の有無、写真記録
アスベスト事前調査(必要時は優先繰上げ) 有資格者・施工会社 調査結果の報告、工程・見積の更新
美装・引渡し書類の整備 施工会社 完了写真、マニフェスト写し、引渡書


即日〜短期でのスケジュール例としては、初日午前に現調・要件確認、同日夕方に見積・工程提示、同時に工事申請の必要書類を整え、承認後に養生→解体→搬出→美装→引渡しと進めます。夜間作業が伴う場合は、警備・立会い・車両・近隣対応も含め、工程表に時刻単位で落とし込みます。


短納期でも、管理会社の承認や東京都で必要な届出(アスベスト事前調査の報告等)を省略することはできません。退去立会いの日程から逆算し、承認取得に要する期間を最優先で確保しつつ、並行作業で時間を圧縮しましょう。契約・支払いは着手金や出来高払いを活用すると、資機材・人員の即時手配がしやすくなります。


まとめ

東京で店舗・オフィスの内装解体を成功させる要点は、①法令・手続の確実な対応(解体工事業登録と産業廃棄物収集運搬業許可の確認、石綿含有建材の事前調査・届出、東京消防庁やビル管理会社への工事申請、搬入出に伴う道路使用・占用の確認)、②原状回復範囲の明確化(賃貸借契約・管理規約で看板、グリストラップ、厨房ダクト等の扱いを確定)、③費用と内訳の透明化(施工費・養生費・産廃処分費・マニフェストを精査し、残置物・夜間・搬出条件などの追加要因を把握)、④工期管理(退去日から逆算し、現地調査→申請→養生→解体→搬出→美装→引渡しを計画)、⑤ビル特性への配慮(騒音・粉じん対策、近隣挨拶、エレベーター・搬出動線の確保)、⑥施工会社選定(保険加入と実績、現地調査の精度、アフター対応)です。


上記を押さえ、相見積もりと仕様調整で予算と品質の最適解を見いだせば、都心部でも安全・円滑な原状回復と期限内の引渡しが実現できます。


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株式会社ペガサス

住所:埼玉県所沢市小手指町3-22-1-306

電話番号:0120-66-1788

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